天然と人工、それぞれのハナビラタケの成長に必要な環境

高山地帯のマツ科の樹木に自生するハナビラタケの成長方法

ハナビラタケは、ひらひらの花びらが集まったような、華やかで美しい見た目のキノコです。ゴージャスな花のような形をした、淡い白色や淡い黄色のキノコで、特殊な環境で自生しています。1000m以上の高山地帯にだけ生育していて、湿気の多い環境でよく育ちます。アカマツ、カラマツ、モミ等のマツ科の樹木の根本や切り株の部分に生育し、直径10cmから30cmほどの大きさに成長します。ときには直径50cmほどに成長したものが発見されることもあり、そのあまりに大きな姿に、人はたいへん驚き、圧倒されます。8月から9月あたりに見られるようになりますが、たくさん生えているわけではないので、簡単には見つけられません。

ハナビラタケはマツ科の樹木の近くで見られますが、ハナビラタケができているということは、その樹木は腐っているということなのです。腐った樹木とハナビラタケの成長には深い関連があります。

はじめに、ハナビラタケの菌糸が樹木に侵入します。そして養分を吸い取り、ゆっくり成長していきます。養分を吸い取られた樹木は、最終的に腐ってしまいます。その腐った樹木の横には、成長したハナビラタケができているのです。ハナビラタケの成長には、マツ科の樹木が欠かせません。

 

困難なハナビラタケの人工栽培

ハナビラタケには、自生している天然ものと、人工栽培されたものとがあります。ハナビラタケを人工栽培するには数多くの種菌が必要です。

まずは、種菌の培養を約3か月かけて行います。ハナビラタケを育てるための培地を作ることも必要です。培地は瓶や袋に詰められ、殺菌されます。そして、培地に種菌を接種します。

この接種作業には、細心の注意が払われます。ハナビラタケの種菌はとてもデリケートで、雑菌に簡単にやられてしまうため、作業者はもちろん、接種場所も徹底的に消毒されます。ハナビラタケの人工栽培において、殺菌や消毒は必須の工程なのです。

種菌接種後の培地の置き場所では、常に温度や湿度等の管理が行われます。自生しているハナビラタケの環境に近づけることが必要だからです。種菌を接種した後、ハナビラタケが成長していき、収穫できるようになるまでに、約3か月かかります。

種菌の成長スピードが遅く、時間も手間もかかるハナビラタケの人工栽培では、種菌が雑菌にとても弱いことから、栽培の失敗も起こりやすいのです。ハナビラタケの人工栽培は簡単ではないので、生産者も少なく、生産量も限られています。生産性の低さ、生産者の少なさが、流通の少なさにつながっています。

実際に、市場に出回ることはあまりありません。生産者は、よりよい栽培方法の研究を重ね、清潔な環境を保つ努力をしています。人工栽培において特に重要なことは、労力を惜しむことなく、徹底した管理を常に行いながら、ハナビラタケの成長を日々見守り続けることなのです。